2015/03/11

【インド・ワークキャンプ2015】参加者のレポート(その12)

2月12日に成田を出発してインドでワークキャンプに参加したメンバー16名は2月22日に無事に帰国しました。皆様のお祈りを感謝いたします。

参加者のマイク・シェロさんからレポートが届きましたので、以下にご紹介します。
レポートのオリジナルは英語ですが、JELA事務局が翻訳と編集をしました。

◇◆◇

マイク・シェロ
(青山学院大学宗教主任・宣教師)

キャンプに参加すると決めた時点では、このキャンプが自分にどれほど大きな影響を与えるか、考えも及びませんでした。帰国した今言えるのは、私は自分の心の一部をインドにおいて来た、ということです。
インドの子どもたちとマイクさん

CRHPの方々との奉仕活動は、とても深く充実したものでした。毎日、さまざまな愛の行為を目にしました。キャンプ期間中に自分が愛を実践している一員になれて、喜びをおぼえました。CRHPの取り組み、持続的な開発事業と人々の健康増進のための働きから、多くのことを学びました。単に困った人を助けているだけではないのです。CRHPは、肉体や社会の問題を少しずつ穏やかな方法で癒す努力をしています。それを愛の心で、人々が自らの問題に自分で対処できるようになるように取り組んでいます。

ある日、人口1400人の小さな村を訪問しました。村の保健衛生士と一緒でした。2か所で、糖尿病の血糖値検査と妊娠9カ月の妊婦の出生前診断に立ち会いました。保健衛生士は、出身地域から選ばれて、CRHPで訓練を受けます。選ばれるのは通常、カースト制度上は低い地位にある女性か寡婦です。ところが、彼女たちが訓練を受けて、地域の保健維持にための初歩的な働きができるようになると、社会的地位は著しく高まります。存在価値が認められ尊敬されるようになるからです。これは、カースト制度を切り崩す一つの方策です。

保健制度を整備する上で、CRHPは地域で手に入る資源を重視します。血糖値検査を例に取れば、専門器具を用いるのが良いと思うかもしれませんが、それはどこにでもある物ではなく、また安く手に入る物でもないのです。実際は、診断用の管、少量の尿、そして、ある化学溶液を数滴たらせば、十分に検査の用をなすのです。台所から熱い石炭を持ってきて、たらした溶液を温めると、検査結果は得られます。初心者であっても、学んで身に着けたこのような技術によって地域に貢献できるということです。

出生前診断の場合、資格のある看護師か産婆が立ち会いますが、訪問のアレンジをするのは保健衛生士です。地域で信頼されているからです。保健衛生士は、村の初歩的な保健ケアとCRHP病院でのレベルの高い医療の間の橋渡しをする重要な役目を担っています。彼女が間に入っているからこそ、出生時に産婆を呼んでくることが容易になります。保健衛生士を間に入れるという、配慮のゆきとどいた制度は、人間どうしの信頼関係を強め、公衆衛生や健康を向上させるのに効果を発揮しています。

これまで書いたことは、CRHPの素晴らしい働きを示す好例です。彼らは人々の病や、体や精神の状態を癒すことに終始せず、あらゆる領域における壊れた状態を癒すように努めています。これこそ、人間を全体としてとらえた新しい社会を構築する道です。

CRHPの働きに接して、私は謙遜にさせられ、目が開かれました。彼らは激貧の人々に注目し、極めて困難な環境の中でも明るさを失わずに奉仕しているのです。何人かと話しながらスラム街を歩いたとき、そこに住む人々の生活の貧窮度を聞かされた私は涙を禁じ得ませんでした。心が震えました。そこに住む人も自分も同じ人間だという思いに突き動かされたからです。住んでいる世界は大きく異なっても、この貧しい地域の一人ひとりは私の兄弟姉妹だと感じました。地理的には遠く離れていても、私たちは人間としては一つの家族なのです。家族なら、互いのために、互いを思いやる心で、自分の全力を振り絞って助け合うべきです。

私は日本に住んでいて、日本が大好きです。日本は私の「家」であり、ここに私の心もあります。でも、今は違います。私の心のひとかけらはインドにあるからです。実際のところ、世界の貧困地を訪問すればするほど、私は自分の心の一部分がそこにある感覚を持ちます。それを思うと、時には悲しくなり、泣くことすらあります。しかし、これは悪いことでないのです。こうあってこそ人間と言えるからです。

私は日本に20年以上住み、ここに家族もいます。日本の美しい文化、平和、安全、そして何でも手に入る環境にとても感謝しています。この恵まれた環境に住む日本の青年を一人でも多く、人間性回復の奉仕の旅に連れて行きたいというのが私の夢です。CRHPは、その訪問候補地リストのトップにあります。